左手の運指考察 [1] 1フレット1フィンガー

はじめに

今回からしばらくは、テーマを「左手の運指考察」として、今までの経験を文章にまとめてみようと思います。

エレクトリック・ベースの運指といえば、濱瀬元彦氏の「ギター、ベースのための読譜と運指の本」や「ベースのための読譜と運指の本[実技編]」などが有名だと思いますが、僕はこれらをまだ読んではいないです。あくまでも、自らの経験から導き出せる範囲の法則を抽出してまとめてみたいと思っています。

(そして、ある程度まとめ終わったら濱瀬元彦さんの本を読んでみたいと思ってます。自己分析を十分おこなってから読めば理解も深くなるだろうし、自分の考えのなかでも良いものは活かしていけると思うので。)

1フレット1フィンガーとは

1フレット1フィンガー」とは、左手のポジションをある場所に決めた際に、人差し指はこのフレット、中指はこのフレット……というように、各指ごとに弾くフレットを固定し、どの弦を押弦するときにもそのルールで行う運指のことをいいます。

具体的には、人差し指が7フレット目にくるポジションの場合、人差指で7フレット目を押弦し、中指で8フレット目、薬指で9フレット目、小指で10フレット目を押弦し、その4フレット分を1ポジションとするといった考え方になります。1つの指が1つのフレットに対応する運指なので「1フレット1フィンガー」というわけです。

この例では人差し指から小指まで4本すべての指を使用するように書きましたが、「1フレット1フィンガー」という言葉の意味的には、「3本指での1フレット1フィンガー」というのもあり得そうです。しかし、このサイトでは「1フレット1フィンガー」は4本指で行う運指とします。なぜ4本指なのか。その理由は後述します。

僕は、エレクトリック・ベースの左手の運指に関しては、この1フレット1フィンガーが基本だと考えています。なぜ基本と考えるのかと言いますと、ベースを演奏するにあたって1ポジションで4フレット分をカバーすることができると、非常に効率の良い運指ができるからです。その理由も後述します。

ポジション

ところで「ポジション」とは、日本語でいえば「位置」であり、左手の運指における「ポジション」とは「左手の位置」のことを指します。左手の位置を移動することを「ポジションチェンジ」とか「シフト」などといいます。今回の「左手の運指考察」では「ポジション移動」と呼びます。

1フレット1フィンガーの有用性をドレミで検証

1フレット1フィンガーはなぜ4本指で行うこととするのか。なぜ1ポジションで4フレット分をカバーできると、効率の良い運指になるのか検証してみたいと思います。

例えば日本人なら誰でも知ってる基本的な音階の「C-D-E-F-G-A-B-C(ドレミファソラシド)」を次のような手順で弾くとします。

[譜例1]
G|--------------------|
D|-------------7-9-10-|
A|------7-8-10--------|
E|-8-10---------------|
P|-C-D--E-F-G--A-B-C--|
「P」の付く行は音名(pitch)の表示。

小指を除いた3本指で、3フレット分を1ポジションとして弾くとどうなるでしょう? 色々な運指が考えられますが、僕なら次の譜例2のように弾くと思います。

[譜例2]
G|--------------------|
D|-------------7-9-10-|
A|------7-8-10--------|
E|-8-10---------------|
P|-C-D--E-F-G--A-B-C--|
F|-1-3->1-2>3->1>2-3--|
「P」の付く行は音名(pitch)の表示。
「F」の付く行は左手の運指(fingering)の表示。1:人差し指、2:中指、3:薬指、4:小指

譜例中の「>印」はポジションを移動するタイミングを示してます。僕はそれほど手が大きくないので、きっと4回くらいのポジションチェンジが発生してしまいます。手が大きい人でも、1度もポジションを移動せずに弾ききってしまうことは難しいのではないでしょうか。

では同じ手順を1フレット1フィンガーで弾くとどうなるでしょう? 譜例3のように弾くことが出来ます。

[譜例3]
G|--------------------|
D|-------------7-9-10-|
A|------7-8-10--------|
E|-8-10---------------|
P|-C-D--E-F-G--A-B-C--|
F|-2-4--1-2-4--1-3-4--|
「P」の付く行は音名(pitch)の表示。
「F」の付く行は左手の運指(fingering)の表示。1:人差し指、2:中指、3:薬指、4:小指

ご覧のとおり、低いドから高いドまで、左手のポジションを一度も移動せずに弾けてしまいます。ポジション移動が必要無いということが、1フレット1フィンガーによる運指の効率の良いところです。なぜポジション移動が必要なくなったのかというと、ベース上での「ドレミファソラシド」の音の並びが、上記のような4フレット内の運指で弾けるような並びになっているからです。

つまり、(4本指での)1フレット1フィンガーの運指は3本指での運指と比べて、決定的に「ドレミファソラシド」を効率良く弾けるのです。そして、「ドレミファソラシド」という音の並び――正確には音の間隔の組み合わせ――は、たいていの楽曲の中に含まれているので、1フレット1フィンガーの運指はたいていの楽曲を効率良く弾けると言いかえる事ができると思います。

もっとつきつめれば、1つのポジションでたくさんの音が押さえられる方が、運指としての効率は良さそうな気がしますが、左手の運指に使える指は4本しかありません。1ポジションを4本指で5フレット分以上カバーするには、指と指の間隔を広げるフォーム=ストレッチをする必要があり、安定した運指を行うことが難しくなりますので、やはり4本指で4フレット分カバーする1フレット1フィンガーを運指の基本と考え、ストレッチを含むフォームは応用と捉えると良いのではないでしょうか。

参考――歴史あるコントラバスの運指

僕はエレクトリック・ベースしかやっていないので詳しくはありませんが、ウッド・ベース――すなわちコントラバスの運指は4本指で4フレット分カバーする1フレット1フィンガーではないようです。

専門書を読んだことはありませんが、Wikipediaのコントラバスの項などを見るかぎり、人差し指と中指と小指の3本での運指となるようです。

エレクトリック・ベースは一般的にフレットが打ってあり、押弦の精度が多少低くても正常なピッチでの発音が期待できるので、手が小さめな人でも4本指による1フレット1フィンガーの運指がなんとかできると思います。しかし、コントラバスはフレットというものがないので、押弦の精度が低いとすぐにピッチがずれてしまうため、1フレット1フィンガーの運指は物理的に難しい。そのため、3本指での運指が一般的になったのだと思います。

基本的に、コントラバスとエレクトリック・ベースのチューニングは同じなので、エレクトリック・ベースにコントラバスの運指を適用することは可能だと思います。手が小さく、エレクトリック・ベースであろうとも4本指による1フレット1フィンガーの運指が物理的に難しいという方は、コントラバスの運指を勉強すると良いと思います。

歴史あるコントラバスの運指は、エレクトリック・ベースのそれよりもしっかりとまとめられているだろうから、学びやすいと思います。(このサイトより、よっぽど素晴らしいのは間違いない……。)

おそらく、現在手に入る一番スタンダードな本は檜山薫氏の「ダブルベース〈HIYAMAノート〉―シマンドル習得のために」なのではないでしょうか。僕も興味があるので、濱瀬元彦氏のエレクトリック・ベース用の運指の本の後に読んでみようと思います。


Comments

コメントする

Comment

TrackBack

この文書へのトラックバックURL
http://www.saishokudo.com/zaki/mt/mt-backkk.cgi/208
Info on This Entry
This Category's
«Prev
Webで読むベースの情報 その4
»Next
左手の運指考察 [2] 左手の小指と薬指の訓練について
All Entry's
«Prev
スゴイ変形ベース
»Next
KISS。キヤノンの。