t-kuma@web > Archives > 2005/02/26 > 左手の運指考察 [3] 1フレット1フィンガー+1フレット
左手の運指考察[1]にて、「「ドレミファソラシド」という音の並び――正確には音の間隔の組み合わせ――は、たいていの楽曲の中に含まれているので、1フレット1フィンガーの運指はたいていの楽曲を効率良く弾ける」と書きました。
そう「ドレミファソラシド」は、ほとんどの曲の中に見つけることができるたいへん重要な音の並び――すなわち「音階(スケール)」なのです。この音階が「長音階(メジャースケール)」ということは、たいていの方がご存知でしょう。
ちなみに、「ドレミファソラシド」を「ラ」からはじまる音階として読みかえた「ラシドレミファソラ」は、「短音階(マイナースケール)」と呼ばれることもたいていの方がご存知でしょう。
さらにちなみに、「ドレミファ……」を「CDEF……」と言いかえられることも、たいていの方がご存知でしょう。
ド レ ミ ファ ソ ラ シ C D E F G A B
1フレット1フィンガーは、運指に使用する指が4本であることから出発して効率の良い運指法を探ったものですが、「ドレミファソラシド=長音階」がそれほど重要な音階であるならば、長音階にベストフィットする運指法を探ってみるのも実用的でしょう。もしも、この2種類のアプローチでの運指がある程度同じようなものであれば、こんな楽チンな話はありません。(長音階にベストフィットする運指は、短音階にもベストフィットすることでしょう。なんせ、2つの音階は始まりの音が違うだけですから。)
そこでまずは、長音階の音の間隔を確認してみましょう。
C D E F G A B C 全 全 半 全 全 全 半
CとDの間に「全」と書いてあるのは、CとDの音の間隔が「全音」であることを示しています。同様に「半」は「半音」を示しています。ベースのフレットは半音間隔で打ってあるので、指板上で考えると、全音の場合は2フレット間隔、半音の場合は1フレット間隔になります。
実際に指板上で長音階を図示すると以下のようになります。
G|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--| D|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--| Ax--|--x--x--|--x--|--x--x--|--x--|--x--|--x--x--|--x--|--x--x--|--x--|--x E|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--|--| 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 (A) (B) C D E F G A B (C) (D) (E)(F) (G) (A)
1フレット1フィンガーは、1つのポジションにつき指を4本使って4フレット分をカバーする運指でした。それをふまえて、4フレット分までは1ポジションで弾けるという前提で指板図1を見てみると、7フレット目の「E」、8フレット目の「F」、10フレット目の「G」の3音は1ポジションで弾けそうです。同じように12フレット目「A」、14フレット目「B」、15フレット目「C」の3音も1ポジションで弾けそうです。5フレット目「D」、7フレット目「E」、8フレット目「F」も弾けそうですね。
その他の音は、例えば3フレット目「C」、5フレット目「D」、7フレット目「E」のように5フレット分カバーしなければ弾く事ができないので、1フレット1フィンガーでは弾けないということになります。
ですが、ここであえて、5フレット分なんとかカバーできるとして考えるとどうなるでしょう? 全運指パターンを書いてみます。
5フレット分を1ポジションでカバーできると、上記のようにどの音からでも連続した3音が運指可能になります。まぁ、長音階は2音間の最大差が全音なので当然といえば当然ですが、これが当然という事は、5フレット分カバーする運指ができれば、長音階のなかの連続した3音はどのような組み合わせでも弾けるということです。
しかも、音の間隔の組み合わせをよく見ると、
の3種類しかありません。
組み合わせが3種類しかないということはつまり、1ポジションで5フレットカバーできる運指をすることができれば、長音階は3種類の運指で弾けるということが言えるのではないでしょうか。
ちなみに、音の間隔――つまり2つの音のへだたりのことを、専門用語で「音程」と言うようです。実は、僕は「音程」とは1つの音の高さのことを表しているのかと思っていました。これを書くにあたって、初めてその認識が間違いだと知りました。「おまえ音程ハズしてるぞー」っていうセリフは間違いってことですか……。
指板図1を見るかぎり1つの弦の上であれば、確かに3種類の運指で全ての音を弾く事が出来そうですが、他の弦との関係はどうなるのでしょう。指板図に長音階の全ての音の位置を表示して検証してみましょう。
G--|--A--|--B--C--|--D--|--E--F--|--G--|--A--|--B--C--|--D--|--E--F--|--G D--|--E--F--|--G--|--A--|--B--C--|--D--|--E--F--|--G--|--A--|--B--C--|--D A--|--B--C--|--D--|--E--F--|--G--|--A--|--B--C--|--D--|--E--F--|--G--|--A E--F--|--G--|--A--|--B--C--|--D--|--E--F--|--G--|--A--|--B--C--|--D--|--E 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
無理やり文字だけで指板図を表現していて見づらいですが、指板上の音の位置で載せた指板図を横にして、24フレット分表示したものです。
この指板図から音と音の位置関係を調べ、「C-D-E」の3音をカバーできる5フレット分を1ポジションとし、このポジションで弾ける3音の組み合わせがどのようになっているのかを見てみたいと思います。
ベースの弦は4度チューニング(低い弦から見て、高い方の弦は4度上の音程になっている)なので、ここでは仮に全ての弦が4度チューニングである超多弦ベースを想定し、「C-D-E」を中心の弦で弾いたときの1ポジションで押弦可能なポイントを探ってみたいと思います。全ての弦を4度チューニングと仮定すれば、弦がいくら増えても運指はまったく変わらないので、ポジション移動を考えずに運指を確認する事ができます。
(A)-|--B--C--|--D--|-(E)(F) *1 (E)(F)-|--G--|--A--|-(B)(C) |-(C)-|--D--|--E--F--|-(G) |-(G)-|--A--|--B--C--|-(D) |-(D)-|--E--F--|--G--|-(A) |-(A)-|--B--C--|--D--|-(E) |-(E)-F--|--G--|--A--|-(B) |-(B)-C--|--D--|--E-(F)-| (F)-|--G--|--A--|--B-(C)-| (C)-|--D--|--E--F--|-(G)-| (G)-|--A--|--B--C--|-(D)-| (D)-|--E--F--|--G--|-(A)-| (A)-|--B--C--|--D--|-(E)-| *2 (E)(F)-|--G--|--A--|-(B)-| |-(C)-|--D--|--E--F--|-(G)
上の仮想15弦ベースの指板図を見ると「*1」と「*2」が同じ運指になっています。同じ運指になるということは、オクターブは違えども「*1」と「*2」の弦は同じチューニングだということです。これは実は当然なのですが、少し確認してみましょう。4度チューニングによる仮想超多弦ベースの実際のチューニングを考えてみます。一番低音の弦を通常の4弦ベースと同じ「E」と考えると以下のようになります。
低音弦 E → A → D → G → C → F → Bb → Eb → Ab → Db → Gb → B → E 高音弦
このように、4度上の音程を順にたどって行くとめぐりめぐって同じ音が登場します。しかも、よくよく見てみると、1オクターブ中にある12の音すべてがまんべんなく登場しています。つまり、どの音から考えても必ず同じ音は登場するのです。
したがって、「*1」の弦は「*2」の弦と同じ音になるので、「*1」の弦より高音弦のチューニングは「*2」の弦から上の弦のチューニングと同じになり、運指も同様になります。同じように、「*2」の弦より低音弦のチューニングは「*1」の弦から下の弦のチューニングと同じになり、運指も同様になります。結局、運指的には「*1」と「*2」の間のものが全てということになります。
以上をふまえて指板図3をよく見てみると、3音の組み合わせの登場のしかたには規則性があることがわかるかと思います。「全音+全音」の運指は3本の弦で連続して登場し、上行すると今度は「半音+全音」の運指が2本の弦で連続して登場し、さらに上行すると「全音+半音」の運指が2本の弦で連続しているのです。この部分のみ抽出した指板図を書くと以下のようになります。
|--|--D--|--E--F--| |--|--A--|--B--C--| |--|--E--F--|--G--| |--|--B--C--|--D--| |--F--|--G--|--A--| |--C--|--D--|--E--| |--G--|--A--|--B--|
さらに、5フレット分1ポジションの制約を外せば、以下のような運指パターンを発見する事もできると思います。
|--|--|--|--D--|--E--F--|
|--|--|--|--A--|--B--C--|
|--|--|--|--E--F--|--G--|
|--|--|--|--B--C--|--D--|
|--|--|--F--|--G--|--A--|
|--|--|--C--|--D--|--E--|
|--|--|--G--|--A--|--B--|
|--|--|--D--|--E--F--|--|
|--|--|--A--|--B--C--|--|
|--|--|--E--F--|--G--|--|
|--|--|--B--C--|--D--|--|
|--|--F--|--G--|--A--|--|
|--|--C--|--D--|--E--|--|
|--|--G--|--A--|--B--|--|
|--|--D--|--E--F--|--|--|
|--|--A--|--B--C--|--|--|
|--|--E--F--|--G--|--|--|
|--|--B--C--|--D--|--|--|
|--F--|--G--|--A--|--|--|
|--C--|--D--|--E--|--|--|
|--G--|--A--|--B--|--|--|
すなわち、この「全音+全音」×3、「半音+全音」×2、「全音+半音」×2を1セットとした運指は、1フレット分ポジションをずらしながらも連続しているのです。これは凄い発見だと思いませんか? この「全音+全音」×3、「半音+全音」×2、「全音+半音」×2のパターンの発見は、ベースという楽器にて「ピアノの白鍵を握りこぶしでテキトウに弾くような気軽さ」で長音階を弾くための大きな第1歩になると思います。
例ではパターンの連続性を表現する為に、ありえないほどの超多弦ベースを想定しましたが、当然好ききな部分を切り取って4弦ベースに適用する事ができます。4弦で足りない部分は違うポジションで見つけられるハズです。
長音階から導き出された1ポジション5フレットの運指は、長音階の3種類の音の間隔のうち、「全音+全音」だけは5フレット分を1ポジションとして運指しなければなりませんが、「半音+全音」と「全音+半音」の2パターンに関しては、4フレット分をカバーできれば押弦できるので、1フレット1フィンガーが適用できます。
「全音+全音」のパターンに関しては、1フレット1フィンガーを適用する事はできませんが、長音階を自由に弾きこなすためには、やはりこのパターンの運指を何らかの形で実現した方が良いと思います。
そこで当サイトでは「全音+全音」を含めたパターンを弾くために、「1フレット1フィンガー+1フレット」という考え方を採用したいと思います。すなわち、通常は可能な限り1フレット1フィンガーによる運指を行うが、「全音+全音」のパターンが適用できる場合のみ、ストレッチ・フォームまたは部分的なポジション移動を用いて、(少なくとも思考の上では)1ポジションで5フレット分をカバーするという、変則的な1フレット1フィンガーの運指になります。
これは、手の小さめな人には本当につらいやり方だと思いますが、「全音+全音」の運指は部分的にポジション移動をして対応できるように訓練すれば、きっと何とかなると思います。かく言う僕も、実際に「全音+全音」のパターンを弾く場合はポジション移動が発生する場合が多々あります。